福島県議会議員選挙 立候補予定者への
ダイバーシティ(多様性)に関する公開質問(アンケート調査)の結果概要と分析

2015年11月4日 ダイバーシティふくしま


1.回収率


福島県選挙管理委員会より提供された名簿に基づき、立候補予定者説明会に出席した候補者78名のうち出馬断念を除く77名全員にアンケートを送付。113日までに、37名から回答を得た(回答期限:1030日必着)。回収率は48.1%

 

 

2.性的マイノリティについて

 

【アンケート結果の特徴的な点】


・性同一性障害の困難「早急に解決すべき」62%。同性愛などその他の性的マイノリティについても54%と過半数が「早急に解決すべき」と回答。


・同性パートナーシップ制度導入は賛成35%、反対19%と賛否分かれる。


・「性の多様性に関する学校教育の充実」は68%、「相談窓口・救済機関等の設置」は65%が賛成。

 

【分析と課題】


 性的マイノリティが直面する困難について、「非常によく知っていた」は0%、「ある程度は知っていた」が81%。福島市議選時のアンケート(0%73%)と比較すると、より理解が深まった結果となった。また困難について「早急に解決すべき」との回答(「人権問題であり、早急に解決する必要がある」「人権問題ではないが、早急に解決する必要がある」の合計値)も、性同一性障害の困難については62%(市議選66%)、同性愛などその他の性的マイノリティについて54%(市議選46%)と、過半数の回答が「早急な解決」が必要との認識を示す結果となった。


 ただし個別施策については、判断が分かれるものもある。「性の多様性に関する学校教育の充実」や「相談窓口・救済機関等の設置」については6割以上、「公文書における不必要な性別欄の削除・柔軟な対応」「ユニバーサルトイレの設置推進」についても約半数の回答が賛意を示している。一方、「性的マイノリティに対する差別を禁止する条例を制定する」については賛成が35%、反対が14%、「わからない」が30%、また「(婚姻に準ずる)同性パートナーシップ制度などを導入する」については賛成35%、反対19%、「わからない」27%と、この2つについては他の施策に比べ消極的な回答が目立つ。


 個別施策については、「わからない」と判断を保留する回答が目立つのも特徴的である。パートナーシップ制度については東京都渋谷区や世田谷区の証明書導入が全国的な話題となり、また大阪市淀川区や沖縄県那覇市の「LGBT支援宣言」など、自治体による独自の施策が活発化している。こうした全国的な潮流の中、福島県ではどのような施策を打ち出すのか、積極的な議論が求められる。


 自由記述欄では「問題意識はあったが、現時点では知識不足なので、今後勉強したい」といった前向きな回答も複数見られた。福島県では東京・大阪など大都市圏に比べ地縁・血縁が強いぶん、誰にも相談できず、一人で悩みを抱え込んでいる性的マイノリティ当事者も多い。性的マイノリティについての知識普及と困難を解決する施策は、地方でこそ急務である。私たちのような住民団体と県内のマスメディアが問題意識を共有し、県内世論を喚起していくことが、13人に1人存在する(電通総研・全国約7万人対象の2015年調査)性的マイノリティ当事者の困難を解決する第一歩であるといえよう。

 

 

3.民族的マイノリティについて

 

【アンケート結果の特徴的な点】


・ヘイト・スピーチを含む差別や困難「早急に解決」が68%。復興と関連付けるかは判断分かれる。


・「学校での多文化共生教育充実」は68%、「相談窓口・救済機関の設置」は57%が賛成。


・「差別禁止条例の制定」については判断保留が目立つ。


・上記の3点は、市議会議員選挙の時と同様のものである。ただし、それぞれの割合は微減している。また、「わからない」という回答が目立った。

 

【分析と課題】


市議会選挙候補者の回答と比較すると、民族的マイノリティに対する人権問題への認識はほぼ同程度(「ある程度は知っていた」が73%⇒68%)。また、前回のアンケートと同様の課題が浮き彫りとなった。メディアで取り上げられているヘイト・スピーチの問題や、政府・地方自治体が取り組んできた実績のある多文化共生教育に関しては高い理解が得られた一方で、復興との関連や条例の制定に関しては否定的な考えや、判断を留保する意見が多数見られた。これらの回答の背景にある認識としては、日本人/外国人という二項対立的な思考が潜んでいる。すなわち、あくまでゲスト/他者としての外国人住民という認識に基づいており、私たちが共に生活している社会という想像力が欠如している。これはまた、多数の外国籍住民が日本人と結婚しており、多数のルーツを抱える人びとが多数派となっていく現実の認識と乖離したものでもある。


また、性的マイノリティに関連した質問の回答と同様に、22以降の具体的な設問に対して「わからない」(1424%)という回答が目立ったことが懸念される。設問に対する賛否は個人的かつ政治的な意思表明と理解することができるが、「わからない」という回答が現実の社会問題に対して向き合うことへの消極性や無関心を示すとするならば、マイノリティをめぐる問題をいかに社会に周知・共有していくかが大きな課題としてあげられる。とりわけ、ますますグローバル化が進展し、低成長時代のなかで少子高齢化が進展する地方の社会において、民族的マイノリティと共に生きる社会を整備・構築することは先進国諸国ですでに試みられている切実でリアルな問題であり、地方が国をリードして先進的な取り組みやモデルを提示していく可能性が秘められた領域でもある。

 

 

4.男女共同参画社会の推進について

 

【アンケート結果の特徴的な点】


・女性の困難「人権問題であり、早急に解決」が65%、固定観念の意識改革「積極的に施策」も70%に達する。


・個別施策「トップセミナー」賛成81%、「男性向け啓発」賛成65%。ポジティブアクションについては賛否が分かれた。


・他のテーマに比べて、自由記述が多く、具体的な意見が述べられている。


・上記の3点は、市議選立候補予定者に対するアンケートと同様の結果となったが、早急に解決とする回答が、88%から76%と減少している。

 

【分析と課題】


 女性の直面する困難が人権問題であり、早急な解決が必要だとする回答が65%(人権問題ではないが早急に解決する必要があるが11%)に達している。この要因は、男女雇用機会均等法制定から30年、男女共同参画社会基本法制定から16年、各種法整備とともにDVやハラスメント、ワークライフバランスなどに関する意識啓発が行われてきたことにあるだろう。また、福島県が1995年北京世界女性会議に各分野から人材を派遣し、県民との協働によってふくしま男女共同参画プランを策定し、福島県男女平等を実現し男女が個人として尊重される社会を形成するための男女共同参画の推進に関する条例を制定し、男女共同参画を積極的に推進してきたことも背景にあると推測できる。


しかし、具体的な施策としての「ポジティブアクション」(以下PAとする)を条例に盛り込むことについては、賛成35%、反対38%と反対が賛成を上回る結果となった。反面、副知事に女性を登用することについては、30%が賛成し、反対の16%を上回った。しかし、副知事が複数の場合、当然性別に配慮するべきであるという2件の自由記述に対し、あくまでも適材適所であるとして性別による登用に反対する複数の記述が目立った。今後、PAの有用性に対する理解を進めていく必要性がある。


意識改革に関する項目は、企業などのトップセミナー開催に反対意見はなく、81%が賛成しているが、「わからない」が8%に及ぶ。男性向き啓発運動の活発化についても、反対は5%(2名)で65%24人)が賛成しているが、16%(6人)がわからないと答えている。男女混合名簿についても、「わからない」とする回答が賛成と同じ35%に達している。立候補予定者の大半が男性であることを踏まえると、この数字は男性に対する啓発運動のあり方を考える上で有益な情報となるだろう。


市議選に向けてのアンケートの自由記述で、「女性の貧困」「子育て支援」などへの支援策が指摘されていたことを受けて挿入した「若年女性の声を県政に反映させる仕組みを作る」に対しては、54%が賛同したが、わからないとする回答が16%、性別や年齢にかかわらず広く県民の声をとする自由記述と共に5%が反対している。ここにも、PAへの理解促進の必要性が指摘できよう。